さいかちむし。
お盆も過ぎ、田圃はまだ青々としているが既に穂は頭を垂れ始めている。
もうすぐ秋だなぁ…。
ちょいと撮影する必要がある虫を探しに、昆虫写真家の山口進さんに案内していただき山梨へ。
幸い目的はそれほど時間を使わずに達成できた。やれやれ。
道すがらの車中、色々と話をする中で、“サイカチムシ”について話題が及んだ。
なんとこの近くで見られるところがあるという。
未だに書籍の中でしか見かけたことのない“サイカチムシ”、目標達成したところでそのお姿を拝見しようと移動…………
案内していただいた場所はとある谷沿いの雑木林で、なんと何度か訪れたことのある場所だった。
うーん、まさか見逃していたとはぁ…。
果たして、そこにあったのは直径25センチ程度だろうか、割と細めなサイカチの木であった。
サイカチの特徴はなんといってもその幹から唐突に生える豪快なトゲだと思うのだが、近くにある他の個体にはトゲが出ないのもあると聞いて「そこアイデンティティだろ」と思ってしまう。
サイカチについては正直あまり接点もなかったし詳しいことは知らなかったので、帰宅してから少し調べてみた。
マメ科ジャケツイバラ亜科というところで確かに葉はジャケツイバラっぽくはある。
ジャケツイバラも最近見ていないから記憶の奥底へ沈んでいたなぁ。
山渓ハンディ図鑑での分布は本州、四国、九州、朝鮮半島、中国となっていて、河岸や原野の水辺に多く社寺に植えられることもあると付記。
サイカチの莢(マメ科だから莢のついた豆がなる)はサポニンを含んでいて石鹸のかわりになるそうな。
植栽される場合はそんな理由もあるのか、と思いながら諏訪大社の社叢にあった大木を思い出す。
サイカチの梢を見ているとブーン…という野太い翅音が聞こえてきて、大きな“サイカチムシ”が飛んできた。
よくよく見れば何匹も来ているようである。
こうしてサイカチに群れているのは初めて見る光景なのでちょっとした感動すら覚えた。
レンズを望遠にして、ストロボ炊いて撮り直し、こちらが“サイカチムシ”ことカブトムシ。
先に述べたようにサイカチ自身が有用植物として植栽されていたのなら、地域によっては身近なところもあって、きっとそんなところで呼ばれていた名が“サイカチムシ”だと思う。
そういえば最近の図鑑にはサイカチムシの記述はまだ残っているのだろうか?
案内していただいた山口さんはサイカチにカブトムシが来ていると言っても信じてもらえなかったこともあるそうで、ひょっとしたら昨今の「カブトクワガタはクヌギやコナラ!」という一般論が曲がって伝わり、「カブトムシはクヌギやコナラの樹液にしか来ない」と思い込んでいる人もいるのかもしれない。
それはそれでちょっと恐い状況やなぁ…なんてことも考えたサイカチムシ詣でであった。
2016年8月 山梨県韮崎市
2016.08.17 | Comments(2) | Trackback(0) | 甲虫
