彼の国・越南 その11:Cu chiのチョウ
クチトンネルの森 GR-DigtalII
年末年始のベトナム行、最終日である元旦はホーチミン観光モード。
どうせ一日観光なんだし…とハーフパンツにサンダル、カメラはGRだけというカッコで待ち合わせのロビーへ行くが、Celastrinaさんはというとモロにマジモード…。
「あれ?観光じゃなかったんでしたっけ?」
「ええ、でもどこで何があるかわかりませんから。」
むぅ…言われてみれば確かにその通り。
後で後悔するくらいなら、多少重くてもいいかな…。
私も慌てて部屋へ戻り、結局いつもの装備で観光へと向かうことになった。
そしてこの後、その判断が正解であったということが証明されることになる。
午前中はベトナム戦争の遺産、クチトンネルを観光することにした。
ホーチミンを訪れる人の多くが立ち寄るであろう定番の観光地の一つであり、そして今回の旅の中で唯一(知り合い以外の)日本語を耳にした場所だった。
ホーチミンの市街を抜け、田園風景の中をしばらく走るとクチトンネルがあるベンズオックという町につく。
さすがに観光名所だけあって駐車場もちゃんとあり、意外に欧米人の姿が目についた。
車を降りてみると道の反対側には森があり、どうもそこにクチトンネルがあるらしい。
オナシアゲハ EOS50D EF100mMacroUSM
とりあえず入場券を買おうかと売り場へ向かう途中、いきなりオナシアゲハに出くわす。
入場券を買う人、出てきて一息入れる人で賑わう中、花壇の周りを飛んでは吸蜜している。
周囲の好奇の視線がこちらを向いているのを気にしながら、とにかくその姿を追いかけた。
オナシアゲハ EOS50D EF100mmMacroUSM
実はオナシアゲハをまともに見るのは初めて。
いやはや、これだけでもカメラを持ってきた甲斐があったというものだ。
ホテルを発つとき、いつものつもりなら間違いなく撮れずに悔しがっていただろう。
これが「常に臨戦態勢で臨むというのが紳士の嗜み」というやつだろうか(いや違う)。
いずれにせよ、一言くださったCelastrinaさんに感謝するよりない。
ジャックフルーツ EOS50D EF100mmMacroUSM
入場券を買って地下道をくぐるとクチトンネルのある区画へと出た。
周囲は説明所が並ぶ(言語ごとに棟が違う)広場になっていたが、チラチラとチョウが飛んでいる様子も窺え、ガイドがペットボトルに巨大サソリを入れていたりと悪くなさそうな雰囲気。
Celastrinaさんは「ここはいいですねぇ。観光どころじゃないですよ…。」と言ってフラリと消えた。
一方私とヨドエさんは折角来たのだからとしっかり観光。
ちなみに最初に案内してくれたガイドは私たちのペースが遅いのに愛想が尽きたのか途中で消えてしまったので、ツアーで来ている欧米の人たちに紛れ込み、ちゃっかり案内を聞いてまわる。
戦車ーッ!!
…とはしゃぐおじさん。
ベトコンが使用したというトゲトゲトラップ。
こんなものホントにアメリカ兵に通じたのか?と疑問に思ってしまいそうだが、それでもありあわせの材料でこれだけ作れてしまうのだからすごいことだ。
それに戦時中という特殊な環境下、しかもカムフラージュが得意なベトコンが作ったものである。
どれだけ技術が進もうが、こういう原始的なトラップは間違いなく成果を上げるのだろう。
アメリカ軍の使用した爆弾たち。
手前と奥の白いモノは最近物議を醸したこともある悪名高きクラスター爆弾。
中にちっちゃい爆弾がたくさん入っていて、近隣にあるものを無差別に爆撃するというアレだ。
非戦闘民を…とか、人道的に…とか言う前に、ベトナム戦争では実際に使われていたということか。
ベトナム戦争は私が生まれた時には終決していたから教科書の中にしかない遠い話だと思っていたが、こうしてその痕跡を見ると、なんだかやりきれないような、複雑な気分になる。
戦時中の主食、マニオク。
ほっこりほこほこした味で決してマズいわけではないが、これだけ食べてたら飽きるでしょ。
あ、肝心のクチトンネルはというと"狭い""暗い""怖い""暑い"という四重苦で、少し入っただけでおかしくなりそうなシロモノだった。
長い人では半年以上もその中で暮らしていたということだから、その辛さは想像を絶するに相違ない。
多くの犠牲を出し、苦しい思いをしながらそれでもなお戦い続けたベトコン。
彼らは何を思い、何を信じて戦っていたのか。
なんとか思いを巡らせようとしても、そこには越えることのできない何かがあるのだった。
一通り観光を済ませてスタート地点へ。
くるくるとまわりを見渡すと、大きなタテハチョウが特徴的な姿勢ですい~っと飛んでいる。
んんん~?なんだ~?
私がその姿を捉えあぐねていると、飄々と現れたヨドエさんが一言。
「ん~、トラフタテハが飛んどるねぇ。」
…………正体判明。
トラフタテハ EOS50D EF100mmMacroUSM
そうか、こいつがトラフタテハか。
ろくに標本も見ない人間なので、大きさをさっぱり把握していなかった。
トラフタテハは普段は非常に敏感で近づくことすらままならないことが多いらしいが、観光地という土地柄か、ここのトラフタテハは随分と人慣れしていてこちらをさほど気にする様子はない。
あとで聞いたらCelastrinaさんもきっちり撮影されていたが、周囲に人だかりが出来てしまって困ったそうだ。
トラフタテハ EOS50D EF100mmMacroUSM
枝先でテリトリーを張る。
滑空するときの姿勢は翅を少し下げた独特のもので、凛とした雰囲気を漂わせる。
近くを流れていた河。
運ちゃんたちがハンモックを吊るしてのんびりするなか、自分たちも少しまったり。
この河がメコンの支流かどうかは定かではないが、いかにも熱帯という感じ。
まったりしていたら小雨が降りだした。
丁度いいタイミングと引き上げる。
クチトンネル。
意外な収穫をもたらしてくれたこの場所が、この旅行で昆虫を撮影した最後の場所になった。
ホーチミンへと戻る車中で聞くと、クチトンネルでは上空を飛ぶキシタアゲハも見かけたそうだ。
「この辺で細かい所とか探していったら、いいポイントが見つかるかもしれないですね。」
私がそういうとCelastrinaさんがこう返す。
「でも…激戦区ですからねぇ…。危険ですよ。」
そうだった。
トラフタテハで忘れていた(便利な奴だな)が、ここはベトナム戦争でもっとも激しい戦闘が繰り広げられた場所だ。
人が入らないところに地雷や不発弾が眠っている可能性は…極めて低いだろうけれどもゼロではないだろう。
もちろん、ベトナム都市部を離れた地域ではあながちない話とも思えない。
虫を追いかけて辺鄙なところへ入り込み、地雷を踏んでサヨウナラなんてのはまっぴら御免である。
まだ、ベトナム戦争の影は消えていないのか。
午後に観光したホーチミン市内。
人民委員会庁舎前のホー・チ・ミン像。
彼の名をつけられたこの町を、サイゴンと呼ぶ人は少なくなかった。
さて、今回のベトナム行についてはここでひとまず終了とします。
なんだかまとまりがない感じでしたが、まあこれもまた一つの形なのかな、と。
とりあえず一区切り、です。
最後になりましたが、今回の旅行は多くの方のご協力をいただきました。
旅行に誘ってくださったCelastrinaさん、ヨドエさん。
情報をいただいたYさん、段取りなどをしていただいたMさん。
現地でいろいろとご教示くださったKさん、Sさん…。
イニシャルでは書きれない思うのでこのような形になってしまいましたが、ご協力、ご助力頂いた皆様に深くお礼と感謝を申し上げます。
また、このへっぽこで中身のない長文駄文をここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
以上、これにてベトナム編終了とさせていただきます。
- 関連記事
-
-
Vietnam again!(その2) 2010/01/08
-
Vietnam again!(その1) 2010/01/04
-
彼の国・越南 その11:Cu chiのチョウ 2009/02/27
-
彼の国・越南 その10:セセリ類 2009/02/24
-
彼の国・越南 その9:越南的日影者 2009/02/15
-
2009.02.27 | Comments(3) | Trackback(0) | 遠征記
