奄美遠征記その4:奄美の夜に奇跡を見る

amami4.jpg

夕暮れ迫る浜辺へと降り立つ。もともと海水浴場ではないためか自分達以外に人影はない。
アダンの茂みからカサコソと音が聞こえている。大きな音ではないだろうが、静かな浜辺でははっきりと聞き取れる。かなりの数だ。
手にした懐中電灯で照らしてみる。


ムラサキオカヤドカリ
ムラサキオカヤドカリ EOS20D EF100mmMacroUSM ストロボ
昼にも見られたオカヤドカリ達。夕暮れと共に一斉に活動を始めたようだ。昼間には見られなかった大型の個体もいる。この個体はその中でも際立って大きかった。ムラサキの名の通り、ヴィヴィッドな色が目に痛い。
「こっちにでっかいのいるよ~。」
くぼ氏に声を掛けると彼も驚いているようだ。闇の中にストロボの閃光が瞬く。

むむむぅ~。本命を探しながら浜辺を行く。話によるとブツは夕暮れ直後に現われるらしいが、その姿を見るのは半ば運任せであるという。たった一日で確認できる可能性は低いはずだ。こちらの「そろそろトラップが利きはじめてるかも」のセリフに唆され、くぼ氏はこのまま探し続けるか、それともトラップへと移動をかけるべきか少々迷っているようだ。
おいおい、これを見たいといったのはお前だぞ。

ムラサキオカヤドカリに夢中のくぼ氏を置いて浜辺を照らす。カニの空けた穴が多い中、ひときわ大きな砂山が眼に入る。すぐ脇には穴が空いているようだ。
アカウミガメの穴と夕焼け
夕焼けと穴ぼこ EOS20D Sigma15mmfisheye ストロボ
でかいカニがいるのかな?と覗き込んでみた。
アカウミガメの穴
めっけ!!
中に蠢いているのは黒褐色の物体。まかり間違ってもカニなんぞではない。
間違いない。アレだ。体が震えた。

s「くぼ! いた! おい! …めっ…かめッ!!」
く「あぁん?なにぃ~?」

相変わらずオカヤドカリに夢中なくぼ氏は生返事。またハブのこと忘れてんな、コイツ。

s「だ・か・ら・っ!! カメっ!!  ウミガメっ!!」
く「何っ!?まぢか!?」
s「だからいたっつってんだろが(#゚Д゚)ゴルァ!!」

ようやく本気にしたらしい。穴を指し示し、覗くよう伝える。覗き込んだくぼ氏、無言でこちらを見て頷く。それにしてもなんて運がいいんだろう。まだ探し出して30分も経っていない。それどころか浜辺を往復する(予定だった)往路である。ありがとう!!アマミク様!!

こりゃ徹夜でもしかたないね。二人でそう決めて、準備を整える。
空には満点の星空。こんな星空を見たのは何年ぶりだろう。
星空
星空 EOS20D Sigma15mmfisheye
じりじりと過ぎてゆく時。穴には変化は見られない。
こりゃ長丁場になりそうだ。ただ待っているのもつまらないので、刺激を与えないよう注意しながら近くをウロウロする。
スナガニ
スナガニ EOS20D EF100mmMacroUSM ストロボ
周辺でよく見られるスナガニ。これでもかというほど見事なカムフラージュだ。おまけに走るスピードはかなりのものなので何度も見失った。
オオイワガニ
オオイワガニ EOS20D EF100mmMacroUSM ストロボ
こっちは多分オオイワガニ。本州にいるイワガニによく似た雰囲気だ。産卵を控えているようで♀は卵を持っていたが、写真を撮り忘れた。ぐやじい~。
ちなみに私にとってイワガニは好敵手。小学生のころ、初詣での願い事が「今年はイワガニ採れますように」だったこともある。







あれからどれぐらい時間が経ったのか…。
周囲が真っ暗な中、満潮を迎えた波の音だけが大きく響く。
そして唐突に変化は訪れた。
脱出開始
脱出秒読み EOS20D EF100mmMacroUSM ストロボ
穴が大きくなってきた!そろそろ脱出が開始されるのか!?

出てきそう
脱出開始!! EOS20D EF100mmMacroUSM ストロボ2灯
いや、すでに脱出は開始されていた。最初の一匹が海に向かって歩いている。

アカウミガメ
アカウミガメ EOS20D EF100mmMacroUSM ストロボ
子亀全容。甲羅の特徴からこのカメはアカウミガメのようだ。子亀の歩く速度は案外速く、こちらの予想を上回っていた。踏まないよう細心の注意を払いながら、必死こいて撮影する。
それにしてもなんてラヴリーな…。

波打ち際
到着 EOS20D EF100mmMacroUSM ストロボ
さっさか歩く子亀は波打ち際へ到着!!
ざっぱ~ん
旅立ち EOS20D EF100mmMacroUSM ストロボ
ざぶ~んと波に飲まれて大海原へ!!
元気でね~~~~~!!

ああ、なんか感無量だ…。

しかし、穴のところへ戻ると更に凄まじい光景が待っていた。








ワラワラ出てくる
わらわら出てくる EOS20D EF100mmMacroUSM ストロボ2灯

ぎゃあァァぁァァァッ!!!!

なっ…

なんじゃこりゃぁぁ!!


ひぃぃぃぃ~…



もう

何がなんだか

ワケワカメ。

ヽ(゚∀゚)ノアヒャ


抜け出す
一足お先に♪ EOS20D EF100mmMacroUSM ストロボ2灯

それからは早かった。
次々と脱出してくる子亀達。
たちまち周囲はカメだらけになった。

く「うおぉぉぉぉ!!」

s「ひゃぁぁぁぁぁぁ…」

パニくる二人。

脱出!!
脱出!! EOS20D EF100mmMacroUSM ストロボ2灯

そんなアホどもを尻目に猛攻を続けるカメプラザーズ。

気がつけば子亀がこっちへ寄ってくる。

しまったぁぁ!

子亀は明るい方向へ進もうとする習性があったんだった!

「いやっ…ちょっ…こっちじゃない!あっち!!」

海を指差し必死に諭そうとするも、ンなことが通用する相手ではない。

だぁぁっ!

「こっちだよ~おいで~おいで~」
くぅるり♪と海側へ回り込み、向かうべき方向へ誘導する。
幸い子亀達は素直に向き直り、次々と波間へ消えていった。

ハぅ…

気がつくと一連の狂騒曲は終焉を迎え、先ほどまでの騒ぎはどこへやら。
再び浜辺に静寂が訪れる。
くぼ氏はアカマタ(蛇)を探しているようだ。なんでも子亀を捕食するシーンを見たいのだという。

く「お~い こっち~」

くぼ氏に呼ばれる。
s「ん?何よ?  …ってこれは!!」

ツノメガニ
ツノメガニ EOS20D EF100mmMacroUSM ストロボ
一匹のツノメガニが子亀を連れ去ろうとしていた。体のサイズはほぼ同等でも子亀に勝ち目はない。
残酷なようだがこれも自然の掟。
私たちは(鼻息を荒くして)ただひたすらシャッターを切るしかなかった。
ところが、ストロボの連続にビビッたツノメガニは子亀を置いて逃走してしまう。
う…自然の掟…崩しちゃった…。
ちょっと罪悪感にかられる。ツノメガニには悪いことしちゃったな…。

終わり…
痕跡 EOS20D EF100mmMacroUSM ストロボ2灯
浜辺に残された穴。もはや動く影はない。





全てが収束したのは深夜だった。既に日付は変わっている。

s「なんだったんだろな、あれ。」

頭の中ではまだ何かがグルグルと回っている。まるで現実味がない。

く「いや~、良かった~。」

くぼ氏はどうやらご満悦らしい。
どこか地に足が着かない、ふわふわとした感覚の中、帰途につく。

こうして不思議な夜の出来事は幕を閉じた。

気づかぬうちに昇っていた月。
全てが終わった浜辺を、淡い光が優しく照らし出していた。
南国・月夜
南国・月夜 EOS20D Sigma15mmfisheye
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2006.08.26 | Comments(2) | Trackback(0) | 遠征記

コメント

最後まで読んだ。

いいなー うらやましいなー 
人知れず亀の子たちが海へ旅立つなんて、日本にもそんな場所があったのね。
しかし、サンゴが死滅してしまったのは本当に残念ですね。取り返しがつかないことなのかな。

2006-08-27 日 20:34:20 | URL | スタジオA #87fPZhO2 [ 編集]

ありがとうございます

毎回長くてすみません。ホンチャンのウェブサイトを持っていないのでこんな形になってしまいました。
ウミガメの孵化、すごくよかったですよ。それに子亀の可愛いことときたらもう…。鼻血モノです(その1に書いていた鼻血ものとは子亀の写真だったのです)。アカウミガメは本州沿岸でも産卵するそうです。産卵シーンもきっと感動ものだと思いますのでこちらも見てみたいですね。
サンゴはかなりショックでした。奄美の地形図を見ると沿岸部にはかなりサンゴ礁が発達していたようですが、いまではもう…。また環境が改善されれば戻ってくることもあるのかもしれません。そうなってくれることを祈りたいと思います。

2006-08-27 日 20:54:28 | URL | spatica #- [ 編集]

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ムシは好きだが見つけられない、典型的なふしあなさん。
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